朝のブログ

人生雑感です。

『そして誰もいなくなった』:映画(1945年)とドラマ(2015年)の比較

 

 はじめに

 ミステリーの女王、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』(原題:And Then There Were None)を映像化した2作品の紹介です。

 

 観た感想をざっと挙げていきます。

 ※内容のネタバレなし。

 

 映画版(1945年・米FOX)

 登場人物のイメージが原作に近い。特に執事やロンバード。

 会話の内容や掛け合いのテンポがいい。

 コミカルな要素もあり、雰囲気が重くなりすぎない演出が施されている。

 歌と音楽が効果的で、10人の兵隊の詩の印象づけに成功している。

 映像はかなり古い。

 白黒で何が起こっているのか見辛いシーンもある。

 やや冗長。

 ラストで真犯人が明かされるシーンはあっさり。

 結末は爽やか。

 

 

 

 ドラマ版(2015年・BBC

 全体的にシリアス。

 映像が綺麗。

 3話構成で1話当たり1時間弱なので、集中して見ることができる。

 キャストが豪華。

 判事やブレント夫人はこちらの配役の方が好き。

 ヴェラ役の女優の演技が素晴らしい。

 ロンバード役のエイダン・ターナーの演技が光る。

 重要な10人の兵隊の詩の印象が薄い。

 人物の背景の掘り下げのシーンがやや多すぎる。

 特にヴェラ。掘り下げすぎてホラーみたいな場面もある。

 真相の解明シーンは1945年版よりはしっかりと描かれている。

 結末は原作に近い。

 真犯人の動機は微妙。

 

 

 

 コメント

 両者の大きな違いは、映像とラストです。

 映像の綺麗さは当然ながら2015年版に分があります。

 音楽については、繰り返し流れる10人の兵隊の歌が、なんとも言えない不気味さを漂わせていた1945年版が印象的でした。

 ラストは、原作により忠実なのは2015年版です。完全一致ではありません。

 1945年版の方は、原作を映像化するにあたり、少しでも希望が持てるようにと脚本家が考えた結果なのかなと思いました。

 配役は、どちらも良かったです。

 全体的に原作のイメージに近いのは1945年版かなとも思いましたが、2015年版も素晴らしかったです。

 ラストにつながる真相の解明パートは、1945年版の方はやや肩透かしで、2015年版の方は動機付けに疑問が残るものとなっていました。

 もっとも、結末に応じて真犯人の見せ方も変わってくると思うので、どちらも作品の流れ的には違和感はなかったです。

 

 おわりに

 トータルでは1945年版の方が好きです。なぜならラストシーンが爽やかだからです。

 ただ、これから見る方は、2015年版を見れば十分だと思います。 

 何よりも映像が古すぎるので、見慣れていないとストレスが溜まります。

 また、映画とドラマの違いもありますが、3話で構成されている2015年版の方がとっつきやすいです。

 エピソード1だけ観て視聴を続けるかどうか判断することもできますので。

 いずれもアマゾンプライムビデオにあるのでぜひ。

 

 あとは、絶対に原作を読んでから観て欲しいです。

 もちろん読んでいなくとも楽しめます。

 そして、ドラマを観た後で興味を持った方にもぜひ原作を読んで欲しいです。

 とにかくクリスティは最高なのです。

 

 

 

 以上です。

 

 

他人と知りせばかけざらましをーマスクのある生活

それは師走の終わりの寒い夜だった。

街中を歩いていると、大学院時代お世話になった先輩とすれ違った。

いや、厳密に言えば先輩と似てる人、なのだが。

 

この先輩は大学院生時代、勉強や人生の相談に乗ってくれたり、困った時には進むべき道をさらりと示してくれる、頼りになる人だった。

昼夜を問わず飲みに行っては法律や人間関係の話に盛り上がり、こんな面白い人物に出会えるなんて、大学院まで進んで良かったと、そう思えるほどに敬愛できる先輩だ。

 

そんな恩人とも呼べる人だが、お互い大学院を卒業して職に就いてからは自然と疎遠になってしまっていた。

コロナのせいもあるかもしれないが、尊敬してやまない先輩であるが故、同期や友達と同様に接するのとは違った配慮をしてしまい、なんとなく近況報告程度の連絡以外はとらなくなってしまっていたのだ。

 

そんな先輩と偶然街中ですれ違ったのだから、驚いた。

場所は横浜の繁華街の路地。おそらく仕事帰りなのかスーツを着ていた。

全体的にウェーブがかかった髪質とヘアアイロンで真っ直ぐに伸ばしたであろう前髪。

まぎれもなく私の知る先輩だった。

 

私はすれ違った後、一瞬の間をおいて振り返り、その人の名前を呼んだ。

マスク越しで声がこもったのか、1回では気付かれなかった。

もう一度名前を呼んで、「おつかれさまです!」と声をかけてその人の背後に近寄った。

その人は私の声に驚いたように振り返った。

そしてまじまじと私を見つめ、「はい…?」とだけ答えた。

 

私は違和感を覚えながらその人の近くへさらに歩み寄った。

至近距離で見たその人は、知らない人だった。

全くの他人だった。

体格、髪型、雰囲気、すべてがそっくりなだけの、赤の他人だった。

至近距離でまじまじと見たら、目の大きさや涙袋の膨らみなど、顔のパーツが私の知っているそれとは大分違っていた。

私は、目が悪かった。

 

「あ、すみません。間違えました。」。私は小声でそう言うしかなかった。

その人の方も、私の顔を見て全く知らない人だな、と判断できたのだろう、軽く会釈をしてから、それまでと同じようにまた歩みを始め、去って行った。

 

残された私は、その人の背中が夜の街に消えていく様子を、呆然と眺めていた。

恥ずかしくてその場を逃げ出したい、という気持ちはなく、恥ずかしさと愚かさと先輩への懐かしさとが混じった複雑な感情が体全体を包み込んでいた。

 

先輩は最近何をしているだろうか。仕事で忙しいだろうか。また食事に誘ってみてはどうだろうか。

他人と知っていたら、声をかけずに済み、そして恥をかくこともなかったであろうに。

そんなことを考えながら、私はまた、家路に向かって足取り重く歩き始めた。

 

寒波が到来した師走の冷たい風が、私の歩みをより一層重くさせた。

 

以上

 

 

 

感想 THE MENTALIST/メンタリストs1第14話

ドラマ『THE MENTALIST/メンタリスト』s1第14話「深紅の情熱」の感想です。

 

今回はスパリゾートを舞台にした殺人事件です。

被害者は愛人と不倫していた女性で、事件当夜一緒にいた愛人への聞き込みを中心にジェーン達は捜査を進めていく、というストーリーでした。

 

リゾートとCBIのオフィスを行ったり来たりの話でしたが、事件現場(リゾートの1室)、CBIでの尋問、リゾートのカフェテラス、CBI、リゾートのバー…という風に場面展開のテンポが早くてあっという間に時間が過ぎました。

その都度の会話も軽妙で、内容も事件関連のみならず、恋愛についてジェーンが諭すシーンもあったりと、ヒューマンドラマとしての側面も楽しむことができました。

おとり捜査でのチョウの活躍も最高でした。

 

事件としては、割と意外な人物が犯人で良かったです。

動機が軽く、反省の色も見せない犯人だったことで、ジェーンの怒りも見ることができました。

 

以上です。

シーズン1もいよいよ後半となってきました。

どういう形で終わるのか楽しみです。