愛宕山
太鼓持ち、男芸者と呼ばれる商売がありますが、これは難しい商売でして、男が、男のお客のご機嫌を取らないといけません
東京の方では、まだ古い方が何人かいたそうですが、残念ながら大阪では全然見かけんようになってしまいました、終戦直後にはまだ何人かいたんだそうですが
大阪ミナミの太鼓持ち、一八と茂八という二人が、ミナミの御茶屋しくじりまして、京都祇園町で働いておりました
今日しも室町あたりの旦那衆が、祇園町で遊んでたんですが、「どや、ひとつ野掛けをしようやないかい」、ということになりまして、舞妓さん、御茶屋の女将さんから仲居さん、それに、一八と茂八の両人もお供に加わりまして、祇園町から西へ西へ、鴨川を渡ります
御所からどんどんと西へ出て参りますが、野辺へ出て参りますと春先のことで、空には雲雀がピーチクパーチクピーチクパーチクさえずって、下にはレンゲ、たんぽぽの花盛り
陽炎がこう燃え立ちまして、遠山にはばっとかすみの帯を引いたよう、麦が青々と伸びて菜種の花が彩っていようかという本陽気、やかましゅうゆうてやって参ります
その道中の陽気なこと